INTERVIEWS
              
              
              SPECIAL INTERVIEW | 三菱電機
             
          
          
            
              
                インスピレーションを、表情豊かに「映し出す」
優雅な佇まいとハイディティールな造作に目を奪われる『下駄』、迷路のように複雑な構造の差し込み穴に不思議とフィットする『鍵』、洗練されたフォルムと繊細なストラクチャーが共存する『燭台』、精巧な葉脈をみごとなまでに再現した『ほおずき』、細かな紋様が浮き彫りになったテクスチャーとシームレスな継ぎ目が美しい『花器』 。一見して金属3Dプリンタで創作されたものとは信じ難いそれらの品々は、一体どのようなプロセスで生み出されたのか。そして三菱電機が「アート作品」を携えてエキシビションに臨む理由とは。穏和さの中にストイックさが見え隠れする、チームメンバーの面々が語ってくれた。
金属3Dプリンタがデザインの自由を拡げてくれる
ランダム・イアン/デザイナー
「始めに金属3Dプリンタで何を制作しようかと考えた時、日本の文化を投影したものにチャレンジしてみたいと思いました。通常のプロセスと違って金型や切削加工が必要ないので、『下駄』の底に複数の穴を開けてみたり、『かんざし』の薄い花びらや細いチェーンにこだわったりできたのが新鮮でした。『鍵』の複雑な構造も金属3Dプリンタとチタンとの相性を活かすことができ、理想的な仕上がりです。『ハンマー』はジェネレーティブデザイン(注:コンピューターによるデザインの自動生成)で作り、個性的なフォルムを実現できてとても気に入っています。」
「普段の業務では産業ロボットのデザインに携わっていて、さまざまなルールに基づいて作業を進めることがほとんど。今回の制作のように自由にアイデアを形作れるというのは貴重な経験でしたし、よりベターな表現を目指したいという向上心に出会えました。」
秋山朝子/デザイナー 
「『燭台』の制作は、金属の特性である熱への強さを活かしたものを作りたい、と考えたのが出発点でした。どういう形状にしたら火が綺麗に見えるのかを検討して、内部にある格子状の造形を3層に、なおかつラインを斜めに傾けて、という工夫を重ねています。型では抜きづらく削り出しもしにくいような形状に敢えてトライするという、いつもと違った思考をもとに、チームの皆さんや自社の金属3Dプリンタの開発、管理の方々と試行錯誤しながら、おかげさまで完成することができました。」
「試作を重ねるなかで、金属3Dプリンタってここまでできるんだ、と驚くことも。特性をもっと活かすことで、火の揺らぎや美しい見せ方にさらなるクリエイティブの余地があると思います。これからも金属3Dプリンタの可能性を映し出す、魅力的な造形を追求していきたいです。」
石川ひなた/デザイナー 
「一般的に、金属3Dプリンタというと機械的な造形に用いられるイメージがあると思うので、逆に有機的なものにしてみようと『ほおずき』を作りました。特にこだわったのは葉脈などの、整然ではなく自然な形状の表現です。これが想像通りに出来上がってきた時はもう、感動しました。外側と内側との二重構造で繊細な部分まで作り込めたのも、金属3Dプリンタだからこそです。また、綺麗な音色を響かせたり電気を通したりといった表現も金属素材だからこそできる特性だと思うので、今後チャレンジしてみたいです。」
「このほおずきをどんな方に見てほしいか?については、そうですね、ある意味珍しい物ではあるので、まずは見てくださったどなたかの感性に響いたらいいなと思いますし、ご自身の発想に繋げていただけたら。興味を持ってくださった方と『他にもこういうものが作れるかも』という会話もできたら嬉しいです。』
作品をタッチポイントに、産業機器の可能性を感じてもらいたい
佐藤聡/マネージャー
「今回のプロジェクトに臨んだメンバーは、産業分野のデザイナーで、主にFA(ファクトリーオートメーション)関連の仕事をしています。私はグループのマネージャーとしてプロデュースに携わりました。かねてから、FA機器は訴求できるポイントは豊富ながら他社と差が出しづらいという思いがあり、『三菱電機のFA機器を使うとこんな可能性が広がる』というところを広く知って欲しいと考え、出展に至りました。」
「使用した金属3Dプリンタは金型や切削加工を必要としないため、より自由にインスピレーションを形にできるということもあり、メンバー全員が初挑戦ながらモチベーション高く作品と向き合うことができました。 今後も金属3Dプリンタに限らず、三菱電機製のFA機器を使ってまた何か新しいこと、さまざまな方に注目していただけることにチャレンジできないかと構想を練っています。」
小坂勇太 /ディレクター
「チームの一人ひとりが表現を追求したことでバリエーションに富んだ作品が生まれました。ディレクションとしては、その作品一つひとつの個性に光を当てて、そこに込められた探究心や情熱をご来場者様に感じ取っていただけるようにと、プロジェクト全体や展示の設計を進めました。」
「三菱電機がDESIGNART TOKYOに出展する、というのを意外だと感じる方もいらっしゃると思いますが、私たちにとってもチャレンジングでした。もともとは工業用として作った金属3Dプリンタをもっと世の中のいろいろな方に知っていただくために、普段とは全く違うステージに立たせていただいている感覚です。どなたでもふらっと立ち寄っていただき、少しでも面白いな、楽しいなと思っていただけたら嬉しいです。」