INTERVIEWS
FIVE CREATORS UNDER 30
未来を照らす5組の革新者
DESIGNART TOKYOの発起人たちが、将来が期待される30歳以下の5組のクリエイターを独自の目線で選出するUNDER 30。 今年も多くのエントリーの中から、選出されたデザイン&アート界の明日を担う5 組が注目の展示をおこないます。
Kaining He © 2025Kaining He | 時間の贈り物 The Present of Time
中国・杭州出身のKaining Heは、日本の多摩美術大学や武蔵野美術大学を卒業後、プロダクトからグラフィックまで幅広い分野を横断し、素材の物質性への観察を出発点に、ものづくりと人文学との関係を探求。詩的な世界観をベースにした創作活動を行っています。現在は中国と日本で活動しており、DESIGNART TOKYOで発表する作品「時間の贈り物」では、お香の特性を活かし、燃焼過程をデザインに取り入れています。禅の思想と深く結びついたお香の体験を提供します。
Selected by 小池博史 / NON-GRID
華やかで賑やかな「映え」が好まれる現代に、このお香は日本の美意識「侘び寂び」を映し出します。これまでのお線香にひと工夫デザインを施すことでこんなにも愛らしくその香り漂う空間に身を置きたくなる感覚を呼び起こします。素朴さと静けさ、移ろいゆく時間の中に宿る美しさを感じ、日本人の心をそっと再認識させてくれるお香です。
Nomadic | BUY METHOD, KEEP BECOMING
2023年より活動を開始したNomadicは、閉じた枠組みを作るのではなく、揺らぎや余白のある創造性をエンジニアリングによって生活に実装することを取り組みとしています。DESIGNART TOKYOで発表するのは「開かれたモメンタム」。作品は閉じた完成品ではなく、文脈によって形を変え、環境に応答し、外部と切り離せない存在として生成される、生きたメソッドです。本展示では、それらのメソッドが場所や領域を周遊し、つながりを得ていく姿を、物質的・空間的に提示します。
Selected by 川上シュン / artless Inc.
「余白のあるMethod」という彼らのコンセプトには、日本的な“ゆらぎ”や“間”を感じます。その中に「厳密さの中に不確かさを内包する」という深みを期待し、ここから生まれるデザイン作品がどのような着地とクオリティで発表されるのか、楽しみにしています。これからの成長に期待を込めて、セレクトさせていただきました。
閃 / SEN | within the neighborhood
福井県越前市を拠点に活動する同世代クリエイターチーム「閃 / SEN」は、上田樹一、大西弘晃、高田陸央、深治遼也の4人から成り、それぞれ異なる分野でのバックグラウンドを持っています。それぞれの専門性を交差させながら、地域ならではの素材や文化に現地で触れ、それぞれが手を動かすことを通して新たな価値や解釈の創出を目指しています。創出することを目指しています。DESIGNART TOKYOで発表するは、越前和紙に焦点を当てた作品「within the neighborhood」産地としてではなく、近所としてこの地を捉えるからこそ生まれる視点の深度と軽快さを大切にした試みです。
Selected by アストリッド・クライン、マーク・ダイサム / Klein Dytham architecture
SENの素材・場所・時間への探求に心を動かされました。福井の地域伝統をルーツとし、和紙や漆、工芸を用いた作品は儚さと強靭さを併せ持ちます。身近な素材を詩的で現代的な造形へと昇華させ、障子を想起させる和紙の作品や、折り紙のようなサイドテーブルが印象的でした。地域の記憶を尊重しつつ未来を示す姿勢に、伝統への深い敬意から生まれる革新を感じます。
金森由晃|情景 -scene (or memory)-
金森由晃は、東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了し、日常のささやかに息づく現象を切り取り、インスタレーションや立体作品を主に制作しています。クリエイティブユニット「Oku Project」としての活動も展開しています。DESIGNART TOKYOでは、街の風景をモチーフにした「情景 -scene (or memory)-」を発表します。「街中のありふれた風景は無意識に個々の日常や人生と密接に結びついています。毎日歩く夜の帰り道、何気なく眺めていた窓、無意識に触っていた壁の凹凸。そんな風景から生じる些細な現象を丁寧に再構築することで、私たちの記憶の片隅にある情景を拾い上げます。」
Selected by 青木昭夫 / MIRU DESIGN
金森由晃さんの作品「情景 -scene (or memory)-」は日常の風景をモチーフにしたもので、頭の片隅にあった記憶をフラッシュバックさせられました。きっと見た人も思い出の曲を聴いた時に人生の断片が蘇ってくるように、懐かしさやほっとする気持ちに癒されてしまうでしょう。共感を生み出す新たなデザインのあり方が画一化時代に風穴を開ける存在になるのではと思いました。
photo by studio sameTORQ DESIGN|Pyro PLA Project
末瀬篤人、川島凜、伊藤陽介の3人によって構成されるTORQ DESIGNは、神戸芸術工科大学在学中に設立され、2024年より神戸を拠点として本格的に活動を開始しました。プロダクトデザインを軸としつつ、手作業による製造やクラフトにも取り組んでいます。使い手が創造性を発揮できる余白をデザインに残すことを大切にしながら、さまざまな事象を独自に解釈し、それらに形を与えています。DESIGNART TOKYO で発表するPyro PLA Project(パイロ ピーエルエー プロジェクト)は、3Dプリンターによる出力物の表面を直火で熱し、積層の軌跡を溶かし混ぜ合わせることで、新たなテクスチャを生み出す取り組みです。
Selected by 永田宙郷 / TIMELESS
3Dプリンターと樹脂に焼成を加えることで、「素材と向き合い、偶然を受け入れながら美を探る」という工芸の本質を現代へと軽やかに結びつけた点に惹かれました。量産と一品、偶然と必然の対比を自然に想起させるだけでなく、デザインとしての独自性も際立ち、工芸とデザイン双方の可能性を広げる前向きでユニークなプロジェクトとして高く評価しました。
BRAND / CREATOR
Selectors of U30
DESIGNART 発起人
左から:永田宙郷(TIMELESS)/川上シュン(artless)/青木昭夫(MIRU DESIGN)/アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture)/マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture)/小池博史(NON-GRID)/
https://www.designart.jp/