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SPECIAL INTERVIEW | THE LIONS

人生の価値を高めるために 「壁によって人の関係性をつくる」ということ

不動産業界のパイオニアとしてオートロック機能や宅配ボックスなどのアイデアを先進的に取り入れてきた大京。「ライオンズマンション」から「THE LIONS」へ分譲マンションブランドをリブランドして2年が経過した今年、「人生の価値を高める全く新しい家づくりに挑戦する」という考えのもとに生み出されたのが、自由自在に動かせる壁Relation Wallだ。そんな斬新な壁に込められたこだわりや今回の展示への思いを、大京の高橋愛莉と建築家の永山祐子に聞く。

相反する状況が、新しさを生み出す。

株式会社大京 高橋愛莉
Relation Wallは、これからの人の暮らしや家族の関係性を見つめ直す中でたどり着いた“壁に
よって人の関係性をつくる”というコンセプトを軸にして誕生しました。
 
有限会社永山祐子建築設計 永山祐子
通常であれば壁って、関係性を断つイメージが強いものなので、このコンセプトをはじめて耳にした時は正直、戸惑いました。ですが、この矛盾こそが面白さそのものでもありますし、私自身デザインするときにいつも“相反する状況が新しさを生む”という思いを大切にしているので、そういった部分もベースにしながら私なりに“リレーションって何なのか?”ということも考えてデザインしていきました。

“柔らかくて硬い壁”を実現するために

永山(以下敬称略)
Relation Wallそのものは、すごく有機的で柔らかい曲線を描きながら動かしたい。一方で壁としての硬質な感じも欲しい。だからといって硬い素材を使ってしまうと動作と相反する状 況が発生するので、まずはその部分をどうやってクリアにするか解決策を見つけ出すことがなかなか難しかったですね。ただ、カーテンと壁の間みたいなイメージが近いと感じていたので、柔らかい動きそのものはファブリックが持っている柔軟性に頼りながら、固い壁としての質量感みたいなものはルーバー状のポールの部分で表現することによって「柔らかさと硬さが同居する」という状況を形にできたかと思います。

ハイテクとアナログが同居する壁

永山
工夫されたシステムが取り込まれている壁ではあるのですが、ハイテクそのものが形になってしまうと、たとえ落ち着く空間の中であっても、メカニックらしい雰囲気が全面に出てしまうかもしれない。そのような壁にはしたくないと思っていたので、素材そのものの柔らかさや木の質感などは残しながら、アナログにも見えるような工夫も施しました。最先端のシステムが取り込まれている壁ではあるのですが、ハイテクそのものが形になってしまうと、たとえ落ち着く空間の中であっても、メカニックらしい雰囲気が全面に出てしまうかもしれない。そのような壁にはしたくないと思っていたので、素材そのものの柔らかさや木の質感などは残しながら、アナログにも見えるような工夫も施しました。
高橋(以下敬称略)
システムの面で言うと海外の大学などではすでに、カーテンのような薄い素材であっても防音効果があるマテリアルの研究が進んでいるので、Relation Wallのような壁でも周りの音を遮ることのできる技術などを取り込んでいければと考えています。
 
永山
すでに防音効果が高いカーテンが実装されていますし、これからどんどん新素材も開発されていくと思うので、そういったものと組み合わせながら開発していくと、将来的にRelation Wallも防音効果も兼ね備えた壁になるかもしれませんね。

Relation Wallをきっかけに、新たなアイデアを。

永山
今回は天井を使って壁を動かす仕組みを採用していますが、住宅の天井って、オフィスの天井と比べて機能が備わっていないなと以前から思っていたんですね。なので、これまで割と手つかずだったマンションの天井にも機能を持たせることで、壁だけではなく実はもっと別のものも動かせる、いわゆる“システム天井”がつくれるかもしれないと思いましたね。
高橋
“システム天井”すごく気になりますね! 確かに天井に機能性を持たせることで照明や空調設備も住まわれる方の好みなどによって場所が変えられるかもしれないですね。
 
永山
可変性のある部屋を作ろうとすると、ちょうど良いところに照明が欲しくなるじゃないですか。そうすると天井にさまざまなものが組み込まれていれば、壁が動くと同時に機能そのものも動かすことができるので、今まであまり手を付けられてこなかった天井というものの可能性を探っていってもいいのかなと思っています。

DESIGNART TOKYO 2025に寄せて

永山
頭の中で思い描いていたものが形になるということで、私自身とても楽しみにしています。壁としての機能性だけではなく、有機的な動きを実現するためにデザインした「リズムのある天井」の美しさにも注目していただけたらとても嬉しいです。
 
高橋
2 0 2 3 年のリブランド時から取り組んでいるDAIKYO NEXT ONE PROJECTから生まれたのが、このRelation
Wallになるので今回の展示にはとても力を注いでいます。実際に来場されたお客さまが展示空間に足を踏み入れた際、どんなことを感じられているのかダイレクトにわかるので、意見や感想を伺いながら2 0 3 0年の実現に向けてこれからブラッシュアップしていけたらと考えています。
永山祐子
1975年東京生まれ。青木淳建築計画事務所を経て2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事に
「豊島横尾館」「ドバイ国際博覧会日本館」「東急歌舞伎町タワー」、大阪・関西万博「ウーマンズ パ
ビリオン」と「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」など。JIA新人賞(2014)、山梨県建築文
化賞、東京建築賞優秀賞(2018)、照明デザイン賞最優秀賞(2021)、WAF Highly Commended
(2022)、IFデザイン賞(2023)など。現在「Torch Tower」などの計画が進行中。
http: //www.yukonagayama.co.jp/

高橋愛莉
事業ブランドのリブランディングなど、社内外の各プロジェクトにおいてコンセプト策定やワークショッ
プを推進。過去には商品開発室でのR&Dをはじめ、多様なプロジェクトを牽引し、ブランドの価値
創造に取り組んでいる。

BRAND / CREATOR

株式会社大京 

1964 年設立。分譲マンションを主軸として、マンション累計供給戸数は約35 万戸の業界トップ(※)の地位を確立してきた。2023 年4 月には分譲マンションブランドを「THE L IONS」にリブランドし、一歩先の“ 暮らし” の実現を目指すブランドへと変革していく。※全国の事業主別累計供給戸数ランキングで大京は第1位(各社事業開始から2024 年12月末日までの累計戸数)/(株)不動産経済研究所調べのデータを基に算出。

https://www.daikyo.co.jp/
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