Fugue for the Windows

本作は、連続する窓枠に独立した図案を配置し、音楽の対位法のように互いに響き合う布を制作する発想から生まれたシリーズです。光と影、表と裏といった二面性を意識し、対立ではなく互いに補完し合う調和の世界を表現しています。

展示会場の窓の飛散防止用ダイヤ柄グリッドを譜面に見立て、実寸をもとにスケッチと構想を描きました。
通常はリピート柄が多い織布技法を用いながら、あえて1点ものとして独立させるため、織機幅や繰り返しの制約、裏面の色や継ぎ目も初期段階からデザインに組み込み、工房と協議を重ねて形にしました。布は窓空間に合わせ手作業で仕立て上げられ、角度に応じて変化する色彩の微細なニュアンスも感じ取ることができます

展示期間が終わると、この布は窓から解き放たれ、それぞれ別々の場所へと移動していきます。それはまるで、建物の表面から生まれた「皮」が切り取られ、風景そのものを持ち帰るような体験となるはずです。
本シリーズは、作者にとって日本で初めての制作・発表となる実験的な試みです。